30代前半の未経験者で、広告・出版業界にイラストレーターとして転職できる?

今回は「30代未経験者でも、広告・出版業界にイラストレーターとして転職できるか」という悩みにお答えします。

私は全国チェーンのコーヒーショップで正社員として働いています。元々コーヒーが好きで入社したのですが、当時と比べるとコーヒーに対する情熱が弱まってしまい、この先も同じ仕事を続けていく自信がなくなってしまいました。

そこで、休日のプライベートの時間を使って、興味の出てきたイラスト制作の勉強を独学でやり始めました。その甲斐もあって、最近ではネットのスキル売買サイトで低価格(500円)ではありますが、イラスト制作の依頼をもらえるようになりました。

もし可能であれば、広告・出版業界へイラストレーターとして転職したいと思っています。

そこで相談なのですが、30代前半の未経験者でも、最低限のスキルがあってポートフォリオ(作品)が充実していれば、広告・出版業界へ転職することは可能でしょうか?

[相談者:33歳男性/コーヒーショップ/店舗スタッフ/入社8年目]

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回答1:業界経験者の私からの助言は、「まずは評価とコネを築く」

私は、広告・出版業界で働いていた経験がありますが、社内にデザイン部門を設けている会社はあっても、イラストレーターを専属で雇い入れている会社を知りません。

イラストは描く人によって絵のタッチが異なるため、企画や制作のコンセプトに合ったプロのイラストレーターさんに、その都度、仕事を発注するのが業界では一般的です。

そういう現状ですから、イラストレーターとしてやっていくには、フリーランス(個人事業主)を選択することが考えられます。フリーランス以外では、「プロのイラストレーターに弟子入りをする」「デザイン事務所に就職する」という方法もあります。

ただ、弟子入りの場合、表立って募集をしていないので、つてを頼ってお願いするか、直接交渉します。給料は今よりも下がることを覚悟しておいてください。デザイン事務所は、まれに「一緒にイラストも頼むよ」と事務所に発注されるケースを狙ってのことなので、あくまでデザイナーとしての転職となります。

フリーランスの場合、年齢は関係ありません。未経験であっても、作品集があれば活動できます。その作品集を持って広告・出版の会社、あるいは編集プロダクションに営業にまわるのです。

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ちなみに、私が出版社に勤務していたとき、売り込みは大歓迎でした。「依頼できる先が多い」ということは、それだけ選択肢が広がるからです。ただ、すぐに仕事を依頼した人がいる一方で、一度会ったきりの人もいました。

というわけで、すぐに転職を考えるのではなくて、まずは腕を磨いて、業界関係者とのつながりを増やしていきましょう。業界関係者に自分のイラストを評価してもらってから、転職を考えることをおすすめします。

回答2:未経験で広告業界のイラストレーターに転職するのは難しい

年齢とともに興味嗜好が変わるのは当然です。仕事に対しても、同じ興味や情熱を持ち続けることは難しいです。30代で新たに興味が沸いてきたイラスト制作について、お仕事の合間に勉強をしながら、依頼を受けていることは、とても前向きで良いと思います。

ですが、広告業界への未経験イラストレーターとしての転職は、現時点では難しいと思います。その理由を以下に挙げます。

  • 広告業界のイラストレーター募集で、未経験可の案件に、私はほとんど出会ったことがない
  • 専門学校やスクールで学んでいる人もたくさんいる中、独学で学んだ最低限のスキルでは、採用担当者にアピールすることができない
  • ポートフォリオを準備しても、プロのイラストレーターも含めてたくさんの人に見てもらっていないと、ただの自己満足になっている可能性がある

このように、「転職は厳しい」ことを理解した上で、「転職したい」気持ちが本気なのでしたら、悔いのないように最善を尽くしてチャレンジするべきだ思います。例えば、具体的に次のようなことをしてみるのです。

  • より多くの人の目につくようにポートフォリオをWeb上にアップして、自分の志向にあった企業や事務所に積極的に売り込む
  • 専門スクールに通って、高いスキルだけではなくて、講師や仲間から業界情報も手に入れる
  • 広告・出版業界以外にも、転職できそうな業界や企業を探す

あとは、クリエイター専門の求人サイトを見て情報収集したり、人材会社に登録・相談するのもよいでしょう。人材会社では、掲載されていない案件や企業を紹介してもらえることもあります。

業界未経験のイラストレーターの転職活動は、自分だけの力では厳しいです。転職したい気持ちが本気でしたら、積極的に活動の幅を広げることをおすすめします。

回答3:広告・出版業界の理解を深めてから転職活動を!

お仕事をしながらイラスト制作の勉強もしたなんて、頑張りましたね!イラスト制作がとても好きな気持ちが伝わりました。未経験でのイラストレーターへの転職ですが、努力次第では可能だと思います。ですが、理想どおりにはいかないこともあると覚悟したうえで臨むべきでしょう。

というのも、イラストレーターのようなクリエイティブな仕事は個性を発揮できると思われがちですが、自分の作りたいように制作物を作れるわけではありません。「クライアントの要望に沿う制作物を作ること」が仕事です。

私は以前、広告・出版業を行なっている会社の人材派遣部門で人材コーディネーターの仕事をしていたことがあります。

クリエイティブ系の派遣に特化していたので、相談者さまのように、「未経験でデザイナーやイラストレーターに転職したい」という人たちの派遣登録面談を多数経験してきました。その中で感じたことは、「未経験の人ほど『個性を発揮できる』と思っている人が多い」ということです。

また、広告・出版業界へのキラキラしたイメージが先行しすぎている人も多くて、詳しい業務内容を説明すると、「こんな地味な仕事ばかりやりたかったわけじゃないのに!」なんてこともよくありました。

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しかも、比較的残業の多い業界で、会社にもよりますが、労働時間の割にものすごく収入が多いわけではありません。なので、広告・出版業界へのイメージだけで転職を決めるのではなくて、「イラストを描くのが好きだから」という気持ちを強く持つことが大事です。

スキルは独学で習得されたとのことですが、できれば短期間でもスクールに通ったほうがよいです。面接でMacを使った実技試験を実施する会社もあります。デザインソフトをスムーズに使いこなせるかどうかで作業効率が変わってきますので、実技試験を重要視するクライアントは多いです。

ということで、今一度、業界分析をしてイラストレーターのイメージをより具体的に理解してから転職活動することをおすすめします。スキルについては、実務経験がないからこそスクールに通って基礎をしっかり習得すると、履歴書でも熱意をアピールできますよ!

回答4:今の仕事と副業を辞めずに転職活動をして、現実を確かめる

独学で勉強して、実際にスキル売買サイトで実績も作り始めているとのこと、大変素晴らしいと思います。その上で、まずは今の仕事と副業を辞めずに転職活動をして、想像と理想が合っているかどうかを確かめることをおすすめします。

私は企業人事のほかにキャリアカウンセラーもしているのですが、「イラストレーターとして転職する」というのは、経験がかなりある人でもハードルが高いです。

なぜなら、そもそもイラスト制作はフリーランスへの依頼が多いからです。また、スキル売買サイトのように、それなりの価格で仕事を頼める先が無数にあるので、自社でイラストレーターを抱える必要があまりない職種だからです。そして、専任のイラストレーターを募集している企業だと、労働条件が厳しい場合も多いです。

フリーや副業の場合は、案件に対して手を上げる場合が多いので、仕事を選ぶことができますが、企業内のイラストレーターの場合、基本的に仕事を選ぶことはできません。なので、「自分がやりたくない分野の仕事」ばかりをやらなければならないことも、フリーや副業よりは多くなります。

ですから、早く想いのある分野へ転職したい気持ちはわかるのですが、まずは今の仕事は辞めずに転職活動をしてみて、「本当に自分が望むような求人はあるのか」「仕事内容は思い描いているものとギャップがないか」「実力は通用しそうか」などを確かめることをおすすめします。

実際に動いてみると、転職するにしろ、転職しないにしろ、納得感を得ることもできます。

回答5:30代未経験可のイラストレーター求人は過去15年間でゼロ

最近は高性能なスマホやPCの普及によって、イラスト制作の他にも音楽や動画など、10年前とは比べられないほど簡単にクリエイティブな作業ができるようになりました。そんな中、自分の作品が評価されて、お金が支払われる体験が自信になって、本格的にイラストレーターとして業界を志したくなった気持ちは理解できます。

今回のケースのように、「30代で未経験だけど、専門性の高い職種へ転職したい」という相談は、私のキャリアコンサルタント時代にも多かったです。そんな彼らの望みを実現できる求人を紹介したかったのですが、残念ながら30代前半で未経験でも応募可能なイラストレーターの求人は、過去15年間の中で1件もありませんでした

大きな理由の一つが、イラストレーターの求人そのものが少なくて、仮にあっても経験者採用だからです。「年齢と経験が見合う、即戦力を採用したい」というのが企業の本音です。

未経験者は30代ではなくて20代の新卒から採用します。最低限のスキルがあって、ポートフォリオが充実しているだけでは、イラストレーターを志す学生と大差は無いので、若い学生のほうが有利になります。

このようなシビアな状況ではありますが、幸いイラストレーターとして活躍するためには、必ずしも広告・出版業界に身を置かなくても良い時代です。例えば、個人スキルを売り買いできるココナラというサービスの他にも、クラウドワークス、noteやユーチューブなどで簡単に作品を公開できる、一億総クリエイターの時代です。

なので、今のスタイルを拡大して、副業としてイラスト制作の仕事を続けていくことをおすすめします。

3行まとめ:30代未経験でイラストレーターに転職したい人への助言

  • イラストレーターの求人自体少なくて、未経験可は見たことがない(キャリアコンサルタント談)
  • 選択肢は、フリーランス、プロへの弟子入り、デザイン事務所への就職
  • まずはスクールでのスキル習得や、業界分析、コネ作りをする

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