今回は「正社員から契約社員に転職することに迷う」という悩みにお答えします。
正社員で入社して、不動産賃貸の営業部門に配属されましたが、正直自分に合っていないと感じています。お客さんの前で話をすると緊張してしまって、自分の言いたいことを言うのが精一杯で、お客さんの希望や想いを全く聞き出せずに商談が終わってしまうのです。
そのことを先輩に相談するのですが、「なんでできないかな?」「友達いた?」「日本語話せるよな?」といった感じでネチネチと言われるだけで、頭がおかしくなりそうです。
私はもともと経理志望でした。でも、入社2年目で異動願いなんて出す勇気もなくて、しんどい毎日が続いています。
ですが、同級生の会社で「経理を未経験でもOKで募集しているから、面接受けてみない?」との話をもらって「ぜひ!」と思ったのですが、雇用形態が正社員ではなくて契約社員でした。
せっかくの正社員の地位を捨てることは違うと思うし、親に相談しても絶対反対されると思います。
でも、このまま今の会社で営業の仕事を続けると最悪の場合、「病気になるかもしれない」とも感じているので、どうしたらいいか迷っています。正社員から契約社員へ転職することの是非について、アドバイスをいただきたいです。
[相談者:24歳♂/不動産営業/入社2年目]
回答1:「将来に繫がるキャリアが積めそうか」で判断する
現在の会社での業務が合っていないと感じている中で、もともとやりたいと思っていていた仕事に就けるかもしれない機会があるのですね。私は、ひとまず面接を受けてもっと詳しい話を聞いてみることをおすすめします。
私のクライアントで、まさにもともと経理職を志していて、契約社員で数年経験を積んだあとに、正社員で転職を果たした人がいました。
その人には、転職を決める前に、「仕事でどのような経験を積めるのか」「資格取得の勉強も同時にできるような時間は作れそうか(残業が多すぎないか)」を企業との面接で念入りに確認してもらいました。
また、契約社員の身でありながら、かなり広い業務を担当できて、残業も少ない環境でした。そのため、着実に経理の経験と知識を積み重ねながら、空いた時間で簿記の2級も取得できました。その甲斐もあって、次の転職では正社員の職を得ることができたのです。
ただし、経理の仕事も様々あって、場合によっては経理の専門知識がほとんど必要ない業務もあります。「経理職」という職名でも、専門知識が必要ない業務でしたら、正社員の職を捨ててまで転職するのは待ったほうがいいかもしれません。
このように、一口に「経理職」「正社員」という言葉で決めるのではなくて、「将来的に経理職を続けていける経験が積める機会なのか」という視点で見ることが大事です。そのためにも、誘われた経理のお仕事が具体的にどのようなものなのか、条件はどうなのか、一度確認をしてみてください。
回答2:「正社員→契約社員→正社員」を経験した私の答えは、アリ!
しんどい毎日が続いていながら頑張っていますね。やりたいことが明確になっているようですから、正社員から契約社員への転職もアリです!なぜなら、雇用形態よりも仕事内容を優先してキャリアを積めば、のちのち正社員として転職することも可能だからです。
私も正社員から契約社員へ転職した経験があります。新卒で入社した営業の仕事を2年で辞めて、やりたかった人材コーディネーターの仕事に転職しました。契約社員でしたが、「未経験の私を採用してくれるなら、ぜひ!」と転職を決意しました。
相談者さまの今の状況と同じですね。当時は一人暮らしをしていたので、契約社員の給与だとかなり生活は厳しくなりましたが、仕事に夢中だったので苦ではありませんでした。
転職した会社では人材コーディネーターとして多くのことを学んだのですが、働きにくいと感じる点が多々あって、再度転職するか悩んでいました。
そんなときに知人から声をかけてもらって、総合人材サービスを行なっている会社の派遣事業部門に人材コーディネーターとして転職しました。このときも契約社員でした。ですが、転職後に会社規模が大きくなって、一年後には正社員に雇用が切り替わりました。
契約社員に転職したのが24歳のとき、正社員になれたのが26歳のときです。私の場合はたまたま運が良かったのかもしれませんが、新卒で入社した会社から転職していなければ、正社員で人材コーディネーターとして働く未来はなかったでしょう。
ですので、自分に合っていない仕事を「正社員だから」という理由だけで続けるぐらいなら、思い切って転職することをおすすめします。雇用形態だけにとらわれずに、ぜひやりたい仕事にチャレンジしてみてください。
回答3:契約社員で実績を積んでおけば、次の転職に活かせる
元・職業訓練校職員の小池です。
現在の仕事に不満があるものの、誘われた魅力的な仕事の雇用形態が契約社員のために二の足を踏んでいるようですね。
私が勤務していた職業訓練校でも、「とにかく安定している正社員になりたい」という人は多かったので、正社員にこだわる気持ちも理解できますし、契約社員に漠然とした不安があることも理解できます。
正社員と契約社員の大きな違いは雇用期間ですが、今や終身雇用制度は盤石な制度ではありません。「正社員なら定年まで大丈夫だ」と思っているのなら、古い考え方なので改めたほうが転職の幅が広がります。
それに、もともと経理希望で、「未経験OKの経理募集」という、せっかくのチャンスがあるのに、みすみす逃すのはもったいないとは思いませんか?
まずは雇用形態ではなくて、仕事そのものを基準に考えて、今後のキャリアプランを練ってみてください。このまま今の会社でやりたくない営業職を続けて「病気になってしまいそうだ・・・」と不安な毎日を過ごすよりも、転職してやりたかった経理の仕事をする毎日の方ほうが、心身ともに健康的ですし、将来も明るいです。
契約社員も立派な社員なので、経理としての実績を積んでおけばその後の転職でキャリアとしてカウントできます。将来、経理の正社員として活躍するための第一歩として、ぜひ雇用形態にこだわらずに転職に挑戦してみてください。
回答4:今の時代は必ずしも「正社員が安定」とは言えない
結論から言うと、自分が求める経験が得られるなら、雇用形態に関わらず転職すべきです。24歳という若さなら、2〜3年契約社員として経験を積めば、次は経験者として正社員を目指すことも可能です。
私は、15年間キャリアアドバイザーとして数多くの転職事例を見てきましたが、その中で感じるのは、「時代の変化とともに雇用形態の差が無くなりつつある」ということです。
正社員がなぜ「安定している」と言われているかといえば、雇用契約に期間の定めが無い、つまり「退職を申し出ない限り、ずっとその会社に居続けられる」ことが保証されているからです。
確かに、終身雇用と年功序列の仕組みが機能している時代では魅力的な仕組みですが、変化の激しい今の時代は必ずしも「正社員が安定」とは言えません。せっかく入社した会社もずっと存続するとは限りません。ましてや正社員でも、ストレスで病気になって健康を損ねてしまっては本末転倒です。
これからの時代は、自分で自分のキャリアをデザイン(構想・設計)して、常に必要とされる人材であるためにスキルアップを続ける必要があります。正社員である旨味よりも、経験を重視して職場を選んでいる人のほうが、イキイキと働いている人が明らかに多いです。
今回、仮に契約社員であっても、経理の実務経験を積むことで履歴書に書けるキャリアが一つ増えます。経験を積んで、契約社員としての立場や仕事内容に物足りなさを感じれば、もっと評価される職場に転職をするのも一案です。
契約期間が定められていても、その間に仕事を覚えて、契約を更新できるようなスキルを身につければ良いのです。むしろ、そうした環境のほうが危機感を感じて、吸収が早くなるかもしれません。「損して得取れ」の精神で、ぜひチャレンジしてみてください!
回答5:「セルフコーチング」をして今すべきことを導き出してみる
臨床心理士の佐藤です。
自分がどんな人生を送りたいか、目指す「ゴール」を明確にしましょう。心理学には「セルフコーチング」という技法があります。自分との対話を繰り返して、問題の解決法を探るもので、次の6つの段階に沿って対話を進めていきます。
- 自分のゴールを設定する
- ゴールまでの道のりを邪魔しているものは何か探る
- ゴールまでの道のりを邪魔しているものはどこから来ているか考える
- ゴールできない今の状況について心や身体を見つめ直す
- ゴールに到達できる別の方法を探してみる
- 何から始めるか決める
今回の相談を例にコーチングしていくと、次のようになります。
Q1.ゴールは何?
A.正社員から契約社員へ転職するかどうか決断すること
Q2.ゴールを邪魔しているものは何?
A.「正社員の地位を捨てるのは違う」「親に相談しても絶対反対される」といった考え
Q3.邪魔はどこから来ている?
A.世間や親といった、周りの評価を大切にしたい気持ちや、給与や待遇面などでの将来への不安
Q4.心や身体の状況は?
A.今の状況では「自分に合ってない」「病気になるかもしれない」と心も身体も不安でいっぱい
Q5.ゴールするための別の方法はある?
A.正社員を続けるなら「ここを乗り切れば自信につながる!」と自分を励ましたり、退職願いを出す勇気を、異動願いを出す勇気に変えてみる。契約社員に決めるなら「このまま正社員を続けて病気になったら、結局地位を捨てることになる」と視点を変える。給与面の心配も「時間的余裕ができる分、副職で収入を得る」という方法で対処できる
※ここでは「そんなの現実的じゃない」など考えずに、たくさんアイデアを出すことが大切です。たくさん手段を見つけると心に余裕が生まれます。
Q6.何から始める?
A.Q1~5を元に決める
※失敗したら次のアイデアを実践すればOKです。
というわけで、まずは「ゴール」を明確にすることから始めましょう。「どんな自分になりたいのか」「どんな人生を送りたいのか」を自分の心とよく話し合ってください。ゴールから逆算すれば、契約社員になるべきかが決まるのです。
回答6:契約社員は働きやすくて、理想のキャリアプランを実行できる
せっかく入社した会社なのに、自分の希望しない配属になってしまい残念でしたね。ただ、正社員の場合、自分の希望の配属にならない場合も多くて、「経験」と割り切ってお仕事している人もいます。
だからといって、合わない仕事のストレスで病気になっては大変です。それに、「経理の仕事をしたい」とやりたいことがはっきりしているのであれば、正社員にこだわらない転職をおすすめします。
というのも、若手向けの正社員の求人があっても、入社後に希望の仕事に配属されるかどうかの確証がありません。やりたいことができなければ、転職が無駄になってしまいます。
一方、契約社員でしたら、事前に業務内容や勤務場所などを決めて雇用契約を締結するので、やりたい業務に限定した仕事に就くことができるメリットがあります。キャリアプランとしては、まずは実務経験を積むことを優先して、その後、経験を活かして転職する道があります。
なので、入社する際には、業務内容だけではなくて、雇用期間・更新の有無、正社員転換の有無や可能性などを確認して、今後のキャリアを考えると良いでしょう。
結論としては、契約社員は理想のキャリアプランを実行できる契約形態です。やりたい仕事ができるのであれば、ぜひチャンレジしてください。
3行まとめ:正社員から契約社員への転職はアリ?
- 契約社員でも、実績を積んでおけば将来の正社員への転職に有効
- 契約社員は、やりたい業務に限定した仕事に就けるメリットがある
- 「どんな経験が積めるか」「将来のキャリアに繫がるか」をよく確認して
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