「介護職を辞めたいけど、未経験の職種に転職できるのかな……」と不安に思っていませんか?同じように、介護職を辞めたい人から次のような相談をいただきました。
相談
現在、老人保健施設で働いていますが、人手不足で過酷な勤務を強いられています。月4回の夜勤をしても、給料は手取り15万円程度しかなくて、生活が苦しいです。
日本の人口比率を考えても、介護業界の人手不足は今後も改善しないと思うので、介護職を辞めたいと思っています。今より少しでも給料が上がって、できれば事務職などの体力を使いすぎない職種を検討しています。
ですが、これまで介護職しか経験がありません。介護以外の資格も持っていません(介護の資格すら持っていません)。
同じく介護職の経験しかないけど、事務職に転職しようとした友人からは「面接で何度も不採用になって、転職を諦めた」という話を聞いています。
何か資格を取ったほうがいいとは思うのですが、勉強する時間なんてありません。介護職しか経験のない私が、無資格、未経験で、他の職種に転職するのは無謀でしょうか?
(26歳♀/老人保健施設/ヘルパー/中途入社2年目/従業員10名~100名未満/年収200万円~300万円未満/独身)
結論としては、介護職から未経験職種への転職は可能です。ですが、やり方を間違えてしまうと、不採用の連続で転職を諦めることになってしまいます。
そこで、このページでは、人事・キャリア相談のプロ5名が、転職サポートの経験や未経験職種に挑戦する際の考え方を元にして、介護職から未経験職種への転職のコツについて、次のような内容で見解を述べていきます。
この回答をすべて読めば、介護職から異業種への転職成功確率は一気に高まるはずです。
回答1:応募職種に関連する経験を整理して、紹介予定派遣を狙えば転職は可能
回答者:にひら(人事&キャリアコンサルタント)
転職回数:3回
介護職のお仕事を辞めたいと思っていらっしゃるのですね。まだ26歳と若いこともありますので、今の会社で経験したことを整理して、雇用形態にこだわらなければ、他の職種に転職するのは十分可能です。
私は実際、20代半ばで介護職の経験しかない人を、事務職の仕事に転職するお手伝いをしたことがあります。このとき重要だったのは、
- オフィスでの事務処理の経験をまとめること
- 正社員での転職にこだわらないこと
でした。
介護はとても立派なお仕事ですが、施設の入居者をケアしていた内容をそのまま書くだけでは、事務職のアピールにはなりません。
そこで、介護の仕事前や終わりに発生していた事務処理の経験や、同僚に対する細やかな配慮の話を中心に自己PRを作成してもらいました。
また、正社員の求人だと書類でほとんどが落とされてしまう状況だったため、「紹介予定派遣」という、派遣社員からキャリアをスタートする雇用形態での求人に応募してもらいました。
その結果、書類が通過するようになって、見事に内定が決まりました。現在では無事に正社員に切り替わって、正社員として働いています。
このように、応募職種に関連する仕事の経験をまとめて、正社員での転職にこだわりすぎなければ、他職種への転職チャンスは十分にあります。
回答2:退職してハロートレーニングで技術と資格を身に付ける
回答者:小池(元・職業訓練校職員)
転職回数:2回
過酷な勤務の割に収入の良くない介護職を辞めたいものの、転職できるか不安があるようですね。
ご友人の経験は自分の経験ではありません。やってもいないことを諦めては、せっかくのチャンスも逃がしてしまいます。ここは思い切って介護職を辞めて、ハロートレーニングを受講してから転職をしてみてください。
ハロートレーニングとは、希望する仕事に就くために必要な職業スキルや知識などを習得することができる公的制度です。(参照:ハロートレーニング | 厚生労働省 | (2019年7月15日閲覧) )
以前、「未経験職種への転職だと書類選考で落とされる。どうやったら面接までたどり着ける?」でもお伝えしましたが、私が勤務していた職業訓練校にも、異業種から事務に転職したいという人がたくさんいました。
事務職はとても人気で、経験者やそれに等しいスキルを持った人がどうしても優位になるので、ご友人のように何度も面接に落ちる人はたくさんいます。しっかりとした対策なしで転職に臨むことは無謀です。
一方、ハロートレーニングなら、介護職を辞めても各種手当がもらえますし、受講料も無料でスキルを得ることができます。
それに、資格取得の手助けはもちろん、転職のフォローもしてもらえるので、ひとりで転職活動をするよりもはるかに心強く効率的です。実際、ハロートレーニングでスキルや資格を取得した結果、異業種に転職できた受講生もたくさんいました。
ということで、介護職を辞めて異業種、異職種にチャレンジするなら、ハロートレーニングの受講をおすすめします。
回答3:介護職→事務職への志望動機が弱いことが問題
回答者:澤井(元・人材コーディネーター)
転職回数:4回
厳しいことを言うようですが、この状況で介護職から事務職に転職するのは無謀です。
無資格、未経験だから無謀なのではなくて、自己分析が全くできていないことが問題なのです。「介護職が嫌になったから」「とりあえず事務職に就きたい」ではなくて、まずは自己分析することから始めてみてください。
私が派遣会社で勤務していたときのことですが、同じように接客業やサービス業から「事務職に転職したい」と言って派遣登録に来る人がいました。
なぜ事務職に転職したいのか聞くと、「土日が休みだから」「シフト勤務が嫌だから」といった具合で、「今の仕事が嫌だからとりあえず事務職に転職したい」程度の志望動機しか話せない人が多かったです。
このような場合は、「もっと具体的に興味のある業界や仕事内容を絞れるように、自己分析をしてみましょう」とアドバイスしていました。
事務職に転職したくてとりあえず派遣登録に来た人でも、派遣登録をきっかけに自己分析をして自己PRを練り直して、見事に紹介予定派遣(数ヶ月間の派遣雇用のあと、直雇用に切り替わる制度)の事務職に決まった人もいましたよ。
ということで、まずはどんな仕事がしたいのか自己分析することをおすすめします。「介護の仕事をしてきてどんな瞬間にやりがいを感じたのか」「転職してどんなスキルを身につけたいのか」を考えると、興味をもっている仕事が具体的になりますよ。
回答4:介護職で得た協働力の高さをアピールすれば転職は可能
回答者:すみおか(元人事マネージャー&キャリアコンサルタント)
転職回数:1回
介護は社会的にも重要なお仕事ですが、仕事内容と報酬が釣り合わないのは、精神的にもとてもストレスですね。
介護職から事務職に転職するためには、職場の人とのコミュニケーション能力や、協力して共に働く協働力の高さを自己PRにつなげていくことをおすすめします。
なぜなら、事務職の仕事では、パソコンなどの事務処理能力だけでなくて、職場の人とのコミュニケーション力や協働力も必要になってくるからです。
事務処理能力は現時点ではなくても、入社してから身に付けることは可能です。ですが、コミュニケーション力は、入社してから身に付けることは難しいです。企業も、組織の一員として働けない人は採用しません。
私が指導している就職訓練校の訓練生の中にも、未経験で事務職への就職を希望している人がいました。その人は、前職で多くの人とコミュニケーションを取ったり、配慮したりする経験があったことから、その強みをしっかりと自己PRにつなげてもらいました。
その結果、未経験ながらも事務職に就職することができたのです。介護職では、人との関わり合いが多いため、この事例と同じような協働力のアピールが有効です。
ということで、事務職経験がなくても、介護職で培ったコミュニケーション力や協働力の経験を棚卸しをして、自己PRにつなげていくことをおすすめします。
回答5:寝る間も惜しんで未経験職種のスキルを身につける覚悟が必要
回答者:仲森(元人事&キャリア・ディベロップメント・アドバイザー)
転職回数:7回
介護職から未経験の事務職に転職することの大変さの理解と、覚悟が足りていないと感じました。
というのも、ハードワークが理由で介護職を辞めたいようですが、希望している事務職もハードワークだからです。身体ではなくて頭脳のハードワークです。
一見すると、事務職は介護職よりもラクそうに見えるかもしれませんが、介護の仕事とは違うストレスを感じるはずです。
たとえば、事務職は単なるパソコンスキルだけではなくて、正確かつ緻密な事務処理能力が求められます。特に、働き方改革が進んでいる今は、残業が制限されている中で従来どおりの事務処理量をこなさなければいけません。
会社に期待される成果と仕事量のギャップが大きければ、また辞めたくなる状況に追い込まれるかもしれません。
友人が事務職として転職ができなかったのは、このような事務職の実態を正しく理解しないまま、安易な気持ちで面接を受け続けたからではないでしょうか?
私は最近、新しい副業を始めました。正直、うまくいくかどうかわかりません。ですが、成功するために寝る間も惜しんで勉強しています。休日含めた余暇時間は全て副業の勉強に費やしています。
転職であっても副業であっても、未経験のことを自分のものとするためには、「プライベートの時間なんてない」くらいの気概が必要なのです。
というわけで、介護職を辞めて未経験の職種に転職したいなら、寝る間を惜しんででも面接でアピールできる材料を集めておく必要があります。そういう覚悟があるかどうか、改めて考えてみてください。
以上「介護職を辞めたい。未経験で他の職種へ転職するのは無謀?」の回答でした。
あなたは、これらの回答を読んでどう思いましたか?記事下にあるコメント欄にてご意見をお聞かせください。
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