試用期間中に会社を辞めると、今後の転職活動に影響します。相談事例を元に詳しく解説していきます。
建設業界の設備工事会社に就職したのですが、試用期間中で辞めるかどうか迷っています。原因は拘束時間の長さです。
先輩たちの働き方を見ていると、朝8時の現場朝礼から始まって、17時半まで施工管理。そこから書類作成や図面作製で深夜まで残業をするサイクルです。
業界的にも土曜日も仕事をするのは当たり前で、出勤は必須です。場合によっては土日に工事の現場を担当させられて、「1週間休みなし」なんて先輩もチラホラいます。
先輩たちからは、「正直、辞めたい」「うちは仕事優先の人生でプライベートは全くないよ」という声ばかりで、ポジティブな話は全くありません。
入社前からわかっていたことですが、離職率も結構高いみたいで、3~4年経つと半分近く辞めている実態もあるようです。
辞めるなら試用期間中に辞めたほうがいいでしょうか?それとも、これからの働き方改革に期待しつつ、1年くらいは耐えるべきでしょうか?
同じ会社で定年まで働くつもりはないので、今後の転職のことも考えて、どっちの選択をとるべきか迷っています。
[相談者:22歳♂/建設業界/施工管理/新卒入社1年目/独身]
回答1:短期間で離職した経歴があると、書類で落ちてしまう可能性大
回答者:にひら(人事&キャリアコンサルタント)
転職回数:3回
就職したばかりの会社で、会社の嫌なところをたくさん聞いたり、知ってしまったら、不安になるのも無理はありません。ですが、試用期間で辞めてしまうのは、とてもリスクが大きいです。
私は今まで3社で人事採用担当をしてきましたが、経営層からはほぼ必ず「あまりに短期間で離職している人は書類で落とすように」と言われてきました。なぜなら、会社にとって、「すぐに辞めてしまう人は、自社に来てもすぐに辞めるのではないか」とリスクを感じるからです。
ですから、中途採用で、その前の会社では長く働いていたならまだしも、新卒ですぐに辞めてしまって、長く働いた会社が1社もない状態は、よい印象は持たれません。それどころか、面接の前に落とされてしまう可能性が大きいです。
以上のことから、試用期間で辞めるのは極力避けたほうがよいです。1~2年働くことができれば、その後「第二新卒」という枠で別の会社に転職も可能です。先のことまで考えて、慎重に判断してください。
回答2:試用期間の勤務経験はアピールにならなくて、転職で不利
回答者:すみおか(元人事マネージャー&キャリアコンサルタント)
転職回数:1回
長時間労働が常態化していて、ネガティブな印象ばかりの環境だと、将来のことが不安で仕方ないですね。ですが、私は、試用期間中に退職しないで、1年以上働いてから転職することをおすすめします。
なぜなら、新卒入社した会社を試用期間中で退職することは、転職に大きく影響するからです。
私は、行政機関から「若者就労支援事業」の業務を受託して、29歳までの求職者の就職支援をしています。その中で、「新卒入社して試用期間で退職したAさん」と、「新卒入社して1年間働いたあとに退職したBさん」がいました。
二人とも第二新卒という点では同じですが、転職が早く決まったのは「新卒入社して1年間働いたあとに退職したBさん」でした。転職が早く決まった理由として、新入社員の1年間で身につけた経験やビジネスマナーをアピールすることができて、転職先の企業に評価されたからです。
それに対して「新卒入社して試用期間で退職したAさん」さんは、試用期間だけの勤務経験ではアピールすることがほとんどなくて、第二新卒として評価が低かったため、なかなか転職することができませんでした。
このように、新卒入社での試用期間で退職するのは、社会人経験として評価されず、マイナス面が大きいです。なので、1年以上は働いて、転職時にアピールできる経験を積んでから退職することをおすすめします。
回答3:実務経験を積んでから、第二新卒として転職するべき
回答者:小池(元・職業訓練校職員)
転職回数:2回
入社した会社の労働環境が思っていたよりも過酷で、このまま働くか試用期間中に辞めるかお悩みのようですね。
少し厳しいことを言いますが、まだご自分が長時間労働でつらい思いをしたわけでもないのに辞めるのは、考えが甘いです。
というのも、転職の面接で退職の理由を聞かれた際に「先輩の働き方を見て、拘束時間が長くて大変そうだったからです」と回答しても、試用期間ということも含めて、「仕事に対してやる気のない人」と思われるのが関の山だからです。
それに、入社前から離職率の高さを知っていたなら、企業分析が甘すぎた結果です。なので、まずは仕事を覚えて実務経験を積んでから、第二新卒での転職をおすすめします。
試用期間中ということは、まだ仕事をモノにしていないということです。先々転職を考えているならなおさら、今の会社でしっかりと社会人としての基盤と仕事のいろはを覚えてご、自分のスキルを磨くべきです。
私も長時間労働を数年間経験しましたし、長時間労働になってしまう会社のシステムや習慣が存在することも知っています。
でも、自分で解決策を練る工夫もしました。そして、転職の際には、解決のためにやっていた手作業の自動化や時短のためのプログラム作成に大きな興味を持ってもらって、転職に成功しました。
ただ先輩のやり方を踏襲するだけでは長時間労働のままですが、働き方改革の前にご自分で解決策を練ることもできるのです!さらに、解決策を練ること自体が転職の際のアピール材料にもなります。
というわけで、試用期間中に大きな理由なく辞めてしまうと転職活動に響きます。まずは今の会社で実務経験を積んでスキルを身に付けてから、第二新卒での転職を目指してみてください。
回答4:私も新卒入社時にギャップを感じたけど、2年働いた結果・・・
回答者:澤井(元・人材コーディネーター)
転職回数:4回
期待を胸に入社したものの、ハードワークで働き続けるのが不安なのですね。お気持ちはよくわかりますが、定年まで働く気がないのなら、逆に「〇年だけこの会社で働く」と割り切って、もう少し働いてみることをおすすめします。
なぜなら、辞めたい理由を聞く限り、不満だけに目がいっているからです。試用期間で辞めるのがダメということではありませんが、今回のケースだと、会社や仕事内容をよく知ろうともせずに逃げた印象が強くなります。
「拘束時間が長い」「休みがない」「離職率が高い」と、「あれもダメ!これもダメ!」と決めつけてしまってはいけません。
私は新卒で生命保険営業の仕事に就いたのですが、入社した時点で相談者さまと同じようなことを思いました。
「残業は忙しい時期だけ」と聞いていたのに、先輩社員は毎日当たり前のように残業をしていましたし、お客さんの希望があれば休日出勤もしていました。何よりも、先輩社員を見ると、ものすごく離職率が高かったのです。
そんな現実を知って「この会社でずっと働くことはないだろうな」と思いましたが、結局2年働きました。その後、異業種に転職したのですが、転職してから「あの2年間で経験したことが今に活きている」と思うことが多々ありました。
ビジネスマナーはもちろんのこと、精神的なタフさや納期管理のように、業種や職種が変わっても必要なノウハウを身につけることができたのです。
ということで、マイナスの面だけ見るのではなくて、「この会社で学べることはないか」「今後のキャリアに生かせることはないか」とプラスの面に目を向けてるようにしてみてください。
回答5:今の考え方では、ブラック企業の転職を繰り返すだけ
回答者:仲森(元人事&キャリア・ディベロップメント・アドバイザー)
転職回数:7回
結論から言うと、試用期間中に辞めても、1年後に辞めても大きな違いはありません。試用期間中であっても、退職する理由に納得感があれば、転職先は受け入れてくれるでしょうし、1年後であっても転職理由に納得感が無ければ不利になります。
試用期間中かどうかは問題の本質ではありません。私は、あなたの働き方や人生への向き合い方に問題を感じます。
というのも、相談内容から推測すると、入社前から、高い離職率だけでなくて、早々に退職を考えなくてはならない労働環境であることも察しがついていたはずです。
入社後に悩むことは容易に想像できたはずなのに、他の選択をしなかったことが大きな疑問ですし、自分の人生と真剣に向き合っていないと感じてしまいました。
私が人材エージェントの担当としてあなたの採用支援をするなら、「『とりあえず入社して、またあとで考えれば良い』と問題を先送りした、あなた自身の人生の向き合い方から正していく必要があります」と伝えます。
相談の文面からも、「先輩たちが○○だから」「環境が○○だから」「働き方改革に期待」と、他責や他力本願の考え方を感じます。この姿勢のままでは、ブラック企業の内定しか取れずに転職を繰り返すことでしょう。
よって、試用期間中に辞めるかどうかは大きな問題ではありません。よりよい選択をして、その選択に納得できるように、まずはあなた自身の仕事や人生に対する向き合い方を改める努力をしてください。
以上「試用期間中に会社を辞めるのは、今後の転職活動に影響する?」の回答でした。
あなたは、これらの回答を読んでどう思いましたか?記事下にあるコメント欄にてご意見をお聞かせください。
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