長時間労働を改善したいなら、労働基準監督署に訴えるのではなくて転職するのが正解です。相談事例を元に詳しく解説していきます。
現在勤務している会社で、従業員の不足が原因でもう1年以上長時間労働が続いています。
休みは10日に一度あればいいほうで、1日の労働時間は朝9時に出勤(家を出るのは7時半)して夜の9時に帰る(家に着くのは10時半)という、12時間労働が当たり前になっています。
「従業員を増やしてください」「このままじゃ、つらいのでもう辞めたいです」と上司に相談しても、「あと少しの辛抱だから」と言ってごまかすばかりで、何の解決にもなっていません。
「あと少しって、具体的に何ヶ月ですか?何週間ですか?」と聞いても、「そう言われても」「他のみんなも頑張ってるから」など、あやふやな答えを返すばかりです。
肉体的にも精神的にももう限界で、このまま勤めていると体を壊すか、頭がおかしくなってしまいそうです。労働基準監督署に直接訴えれば改善されるでしょうか?他に何かいい解決策はあるでしょうか?
[相談者:30歳♀/ホテル業界/フロント業務/新卒入社7年目/年収300万円~400万円未満/独身]
回答1:私も相談したけど、労基署はなかなか動かない。転職が賢明
回答者:仲森(元人事&キャリア・ディベロップメント・アドバイザー)
転職回数:7回
結論から言うと、労働基準監督署は頼りにならないので、転職をおすすめします。というのも、労働基準監督署に相談に行ったとしても客観的な証拠を求められて、すみやかに是正に向けて動くことはありえないからです。
身一つで駆け込んだところで、話の聞き役にはなっても、具体的なアクションを起こしてもらうことは期待できません。強いて言うならば、従業員全員の過去半年間の勤務記録を提出すれば、何らかの指導くらいはあるかもしれません。
ですが、いち従業員が社員全員の意見を統一させて証拠集めをする労力を考えたら、簡単な方法ではないでしょう。
実は、私も労働基準監督署に相談した経験があります。私の場合は給与を不当に下げられたのですが、実際に指導に至るまで様々な証拠を提出しました。
給与明細や勤務記録だけでなくて、会話の録音データや日々の記録など、監督署が求めるもの以上の証拠をそろえて、やっと重い腰を動かしてくれた、という印象です。労働基準監督署といえども、お役所なので手続きと建前を前提にしか動いてくれないのです。
ですので、今回は転職をするのが賢明です。働き方改革が叫ばれている昨今、労働環境の改善に努力する企業も増えています。現職の労働環境の改善を監督署に求めるより、働き方改革に取り組んでいる会社を見つけて転職するほうが、明らかに合理的です。
回答2:労基署を動かすには証拠資料が必要で、確実に動く保証もない
回答者:すみおか(元人事マネージャー&キャリアコンサルタント)
転職回数:1回
長期労働が当たり前で、上司に相談しても一向に改善されなかったら、今後も不安ですよね。私は体調を崩す前に転職することをおすすめします。
というのも、労働基準監督署(以下、労基署)に相談して長時間労働を改善してもらうためには証拠資料が必要で、実際に動いてもらえるかも確実ではないからです。
私がキャリアカウンセリングを行なっている職業訓練校で、相談者さんと同様に休日もないような長時間労働を経験した訓練生がいました。
社員数人の小さな会社で経営者のワンマン経営だったことから、自力での改善は難しかったため、「長時間労働から抜け出したい」という切実な思いで労基署に相談しました。
すると、労基署からは「改善のために動くには、長時間労働を証明するものが必要」と言われて、窓口対応のみで終わったそうです。
その後、資料を集める中で会社側に労基署へ相談したことが発覚して、いづらくなってしまったことから、最終的に退職することになりました。
このように、長時間労働が続いている環境を改善するために労基署に相談をしても、動いてもらうにはハードルが高いです。確実に動いてくれる保証もないので、体調を壊す前に転職したほうがよいです。
回答3:労基署に訴えたことが会社に伝わると、結局いづらくなる
回答者:にひら(人事&キャリアコンサルタント)
転職回数:3回
10日に1度しかない休日、1日に12時間の長時間労働では、肉体的にも精神的にもつらい状態になって当然です。
「違法な会社の行いを、改めさせたい」という目的でしたら、労働基準監督署に訴えるのも悪くないですが、「自分の労働環境を良くしたい」という目的なら、一刻も早く転職活動を開始することをおすすめします。
というのも、労働基準監督署に訴えたことが会社に伝わると、ほぼ確実に会社にいづらくなるからです。実際に、私の友人も経験していました。
友人は、長時間労働がつらくて労働基準監督署に訴えたのですが、誰が訴えたのか会社に推測されてしまって、訴えたあとに「会社に不利益をもたらした張本人」ということで社員たちから冷たい対応をとられました。
そして、結果的には急な退職を余儀なくされて、転職活動も焦って行なうことになって、大変な思いをしていました。
ですので、あくまで自分の労働環境を改善したいのでしたら、転職したほうが早いです。今の環境は心身ともに良くないので、すぐにでも動いてほしいです。
回答4:労働基準監督署に訴えるよりも、転職に力を注いで
回答者:小池(元・職業訓練校職員)
転職回数:2回
長時間労働への不満を何度も上司に訴えているにも関わらず、全く状況の変化がないようですね。労働基準監督署に訴えるのも1つの手ですが、相談内容では「限界」とのことですので、早急な転職をおすすめします。
というのも、労働基準監督署に訴えるには膨大な力と時間が必要なのに、必ずしも改善されるとは限らないからです。
派遣切りが横行した頃に、友人が不満を漏らしていたことがあります。「先輩にしつこく『タイムカードを見せろ』と言われたり、証拠になりそうな話やメールを何度も確認されたりして仕事の邪魔になるし、本当に嫌だ」と何ヶ月間かグチっていました。
その後どうなったか聞いてみると、「労働基準監督署に訴えたらしいけど、会社は何も変わってないし、先輩は転職した」と言っていました。何ヶ月も仕事をしながら証拠を集めても、結局会社は変わらずに無駄に終わることがあるのです。
それに、「もう限界」と思う状態で働き続けては健康を害してしまいます。以前、「仕事が忙しすぎて職場と家の往復の日々でつらい。転職するべき?」という相談でもお伝えしましたが、私は多忙のために体を壊して今も後悔しています。
なので、労働基準監督署に訴えようと思うパワーを転職に注いで、すぐにでも転職活動を始めてください。心身ともに疲れ切ってしまう前に、早急に転職活動を始めることで先々の後悔を防げます。
回答5:健康より大事なものはない。今すぐに転職を!
回答者:澤井(元・人材コーディネーター)
転職回数:4回
過酷な労働環境が一年以上も続いているのですね。今の状況でしたら、すぐにでも転職することをおすすめします。なぜなら、仕事は健康な身体があってこそできるものだからです。このままだと体調を崩してしまう可能性がとても高いです。
以前、「仕事が忙しすぎて職場と家の往復の日々でつらい。転職するべき?」や「プライベートの時間がない。年収が大幅にダウンしても転職すべき?」という相談でもお話しましたが、心身ともに健康であることは仕事をする上でとても大事です。大げさに言うと、私は「健康より大事なものはない」と思っています。
それに、私が人材コーディネーターとして働いていたとき、職場環境に不満を持ちながらも働き続けている人と、思い切って転職をした人、どちらのパターンも見てきましたが、圧倒的に転職を決意した人のほうが生き生きと働いていましたよ。
労働基準監督署に訴えれば、会社は何かしら改善しようと努力するかもしれませんが、いつ改善されるかはわかりません。もしかすると、改善されないかもしれません。そんなのを待っているうちに限界がきて、うつ病になってしまうかもしれません。
ですので、肉体的にも精神的にも限界を超える前に、転職することをおすすめします。
以上「長時間労働が1年以上続いてつらい。労働基準監督署に訴えれば改善される?」の回答でした。
あなたは、これらの回答を読んでどう思いましたか?記事下にあるコメント欄にてご意見をお聞かせください。
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