AIによる世の中の変化に負けそうなあなたへ
今回は「AIの普及で仕事がなくなる前に転職するべき?」という悩みにお答えします。
自動車部品の量産工場で6年間仕事をしています。金属プレス工がメインの会社ですが、ある大手メーカーのプレゼンで、「機械工はAIで代替できる。作業者はロボットにして、機械のオペレーターや品質確認もAIが行えば、大幅な人件費削減に繋がって大きな利益をもたらす」と聞きました。
その影響もあって、私の会社でも単純作業の工程ではロボットを導入するようになりました。そのため、今まで雇われていた多くの外国人派遣社員がいなくなりました。最終的には、機械のオペレーターや生産管理をAIだけで行なう方向で進んでいます。
そうなると、私の仕事もなくなるのですが、職を失う前に違う業種の会社に転職しておくべきでしょうか?
[相談者:36歳♂/金属プレス/機械加工職/入社6年目/年収500万円~600万円未満/既婚(子あり・共働き]
回答1:AIが普及してからも社内で必要な人材になる
元・職業訓練校職員の小池です。
将来AIに仕事を取られて、自分の仕事がなくなってしまいそうで不安のようですね。でも、急いで転職しなくても大丈夫です!AIが完全に人間の仕事を自分で考えて、仕事を自己完結できるまでになるにはまだまだ時間がかかるからです。そもそも、転職先の他業種もAIによって自動化される可能性もありますよね。
私は事務作業の効率化のために、単純作業や重複する作業をプログラミングで自動化して、作業工数を減らした経験があります。でも、「自動化」と言っても、必ず改修や更新が必要で、そこには人間の知識が必要なのです。
たとえば、法律が変わると、自動化されたプログラムを法律に沿うように直さなければなりません。このときの作業は、法律の変更部分だけ修正すればよいのではありません。業界や、作業内容、社内環境について詳しくて、何をどう変えなければならないのかがわかる社内スタッフが必要です。
つまり、社内で最も業界や、作業内容、社内環境に詳しい人物になれば、作業が自動化しても、システム改修の際に必要な人物になれるのです。
というわけで、AIが普及しても人間の力は必要です。転職するよりも、AIが普及してからも会社にとって必要な人材になるべく、今の業界や会社の知識を深めておくことをおすすめします。
回答2:異業種の転職もリスク。現職でAIをサポートする側を目指すべし
結論から言うと、AIに仕事を奪われるのを恐れて、異業種へ転職するのは得策ではありません。今の職場で必要とされているのなら、その業務を全うしつつ、AIを使う側のポジションを目指すほうが良いです。
なぜなら、異業種へ転職するとなると、年収300万円くらいからスタートする覚悟が必要だからです。私がこれまで800人の採用支援を行ってきた中で、35歳前後で年収500万~600万を維持しながら転職できる異業界の求人は皆無でした。
共働きをしていても、極端に年収を下げてまで転職するのは、どう考えても合理的な判断とは言えません。
また、AIの導入はそう簡単なことではないと考えます。過去に、多くの企業が業務効率化を目指してIT導入を試みましたが、一筋縄ではいかずに定着まで多大なコストがかかっています。今回のAIの導入でも、導入コストの面で同じ苦労をすると思われます。
まだまだ映画のような話にはならなくて、AIの安定稼動までは人間のサポートが必要です。そのときに、「AIのサポートを任せたい」と思えるような人材を目指したほうが、合理的な働き方です。
ということで、AIを恐れて異業種に転職するのはもったいないです。現職で研鑽に努めつつ、来るべきAI時代に備えてください。
回答3:AIやロボットにできない仕事をできる人にスキルチェンジする
「AIやロボットが仕事を奪う」・・・たしかに、いろんな職業でAIやロボットの影響が大きくなっていると感じます。製造ラインのような仕事だけではなくて、経理や給与管理などのバックオフィスの仕事も、AIの代替によって減少していくと思います。
経済産業省発表の「新産業構造ビジョン(PDF)」でも、「バックオフィスの業務や、ミドルスキルのホワイトカラーの仕事は大きく減少していく可能性が高い」と発表されています。
実際に、私の会社にも、ロボット化を推進するRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)業務の依頼が非常に多くあって、企業内の仕事のロボット化が進んでいることを感じます。
その反面、需要が増えそうな仕事もあります。たとえば、経営企画、商品企画、マーケティングなどの「人が考える仕事」や、その企画を具体化する「IT技術者の仕事」です。新しいことを創り出すのは、やはり人間しかできないのです。
IT技術者は、ロボットの導入や運用をしたり、新しい機能を加えるなど、AIやロボットに仕事を教えます。AIスピーカー(スマートスピーカー)が、人間の声に対して質問に答えることができるのも、人があらゆる年代の人の声や質問の仕方など、膨大なデータを集めて、教え込んでいるからです。
他にも、高級レストランの接客やコンサルティングの仕事など、人が直接対応することがサービスの質や価値の向上につながる仕事も、今後は増加が見込まれています。
以上のことから、仕事を奪われないためには、自分の仕事を「単純労働から付加価値の高い仕事にどう変化させていくか」がポイントです。「異業種に転職すれば大丈夫」と考えるよりも、自分の考え方やスキルチェンジをしていくことが、AI時代を生き残る大きなカギになってくると思います。
回答4:転職よりも、今の会社に必要とされる人材を目指す
私が相談者さまの立場でしたら、すぐに転職はしません。焦って未経験の業界や職種に転職するよりも、まずは今の会社で生き残る道がないかを模索します。なぜなら、年齢的にも転職先の選択肢はそれほど多くないと思うからです。
30代後半で未経験の業種や職種に転職した場合、今と同じぐらいの年収をキープするのはかなり難しいです。例えば、「30代後半で未経験OK」の営業職の求人があったとしても、たいてい離職率の高い求人です。焦って転職をしてブラック企業に入社してしまうぐらいなら、今の会社で必要とされる人材を目指したほうが得策です。
AIが導入されることになれば、確かに単純作業に人手は必要なくなると思いますが、「社長と役員以外、社員は必要なし」とはならないはずです。AIだから効率的にこなせる業務がある一方で、人だからこなせる業務もあるはずだからです。人だからこなせる業務を任せてもらえる人材になるべく、今から努力してみてください。
すぐにできる例を挙げると、なんとなくこなしていた作業を「こうすればもっと効率的にできるのではないか」と考えながらやってみたり、後輩に何かをレクチャーをするときには「どう言えばより伝わりやすいか」を考えながら話してみる、といった具合です。
意識を変えると、それに伴って行動も変わってくるはずです。日々の業務だけに目を向けるのではなくて、業界全体の動向や会社の経営状況を気にするのも意識改革につながりますね。
ということで、今すぐの転職はおすすめしません。6年勤続してきた会社ですから、今までの経験を活かして、AIが導入されることになっても必要とされる人材を目指してみてください。
回答5:業種を変えてもAI化は避けられないので、転職はおすすめしない
AIの普及による仕事の変化については、昨今議論が盛んですよね。私の従事する人事分野もAI導入は話題で、採用の書類選考や退職リスクのある社員の発見など様々な活用事例があります。
AIが普及していくと、「仕事がなくなるのではないか」と不安になるかもしれませんが、焦っての転職はおすすめしません。
というのも、AIの普及が仕事に与える影響は業種に限ったことではないので、「他業種へ転職すれば安心」というものではないからです。業種に限らず、単純作業や定型化された作業であれば、AIに代替される可能性があります。
AIの普及と、それによる仕事の環境変化は止められません。そのため、環境変化に適応して職を失わないためには、「いかにAIを使いこなして、付加価値を生み出せるか」という意識を持つことが大事です。
AIは、情報の識別や予測のスピード、正確さは人間より長けていますが、意思を持つことができません。実現すべきゴール設定やガイドライン、判断基準を与えるのはあくまで人間です。意思を持たず指示に従うだけではAIと同じで、それこそAIに職を奪われかねません。
そこで、「解決すべき課題」や「実現したい姿」について意思を持って、AI活用を提案する側へと意識を転換してみてください。現職で6年も経験を積まれていますので、きっと新たな価値を生み出す提案ができるはずです。
ということで、「AIを使いこなして付加価値を生み出す」という一段上の意識に転換して、現職でのキャリアアップを目指すことをおすすめします。
3行まとめ:AIの普及で仕事なくならないか不安な場合の対策
- どの業種でもAI化は避けられないので、転職はおすすめしない
- 今の会社でAIに仕事を覚えさせる側のポジションを目指す
- AIにはできない、人だからできる業務スキルを身につける
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