退職勧奨をされた場合、弁護士に相談したらパワハラを受けそう。どう対処すれば良い?

今回は「違法まがいの退職勧奨をされたけど辞めたくない場合、どうしたらいいか」という悩みにお答えします。

私は、市役所に勤務しているのに毎日夜8時までの残業をこなしていて、ハードな仕事のストレスが原因で、精神的な病気になってしまいました。それで、5ヶ月ほど仕事を休ませてもらいました。

休職して半年が過ぎたある日、上司に呼び出されました。職場に行くと会議室に呼ばれて、課長や次長など上司5人が待ち構えていました。部長に「君は病気で仕事ができないんだよね?」と言われました。

私は、「はい。もう少し休んで、体調が良くなったら仕事に復帰したいです」と答えたのですが、上司たちは、「今、◯◯市は財政が苦しいんだ。一刻も猶予がない。今すぐに仕事に復帰できないなら、もう退職しなさい」と強い口調で言いました。

職場の規定では、診断書を出せば最大1年までは仕事を休めることになっていました。それなのに、退職を強要されました。

「少し考えさせてください」と言ってその場は逃れたのですが、誰に相談して良いかわからなくて、悩んでいます。後日、病院に行ったら、上司たちは私が通院している病院の先生にも、「今後、診断書を書かないでほしい」と、圧力をかけていたことがわかりました。

年齢的にも再就職は難しそうなので、体調が回復すれば職場に戻りたいです。弁護士に相談しようとも思ったのですが、問題を大きくすると職場には戻りにくいですし、パワハラも受けそうで不安です。このような退職勧奨に遭ったら、どう対処すれば良いのでしょうか?

[相談者:41歳女性/市役所/事務職/入職17年目]

退職勧奨0

回答1:弁護士に相談しないと、自己都合退職になって後悔するかも

思いもよらない退職勧奨に不安がいっぱいのようですね。体調不良の上に不安だらけで苦しいと思いますが、思い切って弁護士に相談してください。

退職勧奨は違法ではありませんが、「退職しなさい」と強い口調で言われて退職を強要された点や、通院先の病院に診断書を出さないように圧力をかけていたことを考えると、「退職強要」という違法の行為である可能性が高いです。

それに、休職中に5人もの上司がいるところに呼び出されて、会社の規定を無視して退職を強要されている時点で、すでにパワハラは始まっています!

私の知人に、パワハラや退職強要を受けて退職したにもかかわらず、「自己都合での退職」にさせられた人がいました。パワハラや退職強要の知識が無かったために、ただ怖くて言われるがままに退職届を出したそうです。

退職届を出したあとでは「自己都合」を取り消すことができなくて、「早いうちから弁護士に相談すれば良かった」と後悔していました。「自己都合での退職」と「会社都合での退職」では、失業給付の開始時期や給付の日数に大きな違いがあるのです。

なので、すぐにでもパワハラの証拠集めを始めてください。集める証拠は、メモ(日時、されたり言われたりしたこと、周りに誰がいたかなど)や動画や音声の録音などです。

「少し考えさせてください」とその場は逃れたようですが、上司には「退職したくない」と強く訴えてください。パワハラが怖くて言い出せないとは思いますが、ICレコーダーやスマホなどの録音機能を使って、必ずやり取りを録音することを忘れないでください。

というわけで、どんな小さなパワハラの証拠でも漏らさず集めて、早めに弁護士に相談して自分を守ることをおすすめします。

回答2:弁護士や臨床心理士には「守秘義務」があるので、安心して相談を

精神的な病気になってしまった場合、1人で抱え込まず専門家に相談することをおすすめします。

「精神的な病気」と聞くと「心」や「気持ち」の問題のように感じられますが、実際にダメージを受けているのは「脳」です。ものすごく単純に言えば、「脳のエネルギーが枯渇した状態」のことを指します。

そのため、薬を飲むことでエネルギーを出す機能を活性化させたり、ゆっくり休んでエネルギーが回復するのを待ったりしながら治療していくのです。

ダメージを受けている、もしくは回復している途中の脳は、日常生活を維持するだけでもエネルギーを使い切ってしまいます。考えをまとめたり、適切な判断をしたりといった「思考」のためのエネルギーはほとんど残っていないと思ってください。なので、うつ状態のときなどは「大きな判断はしないこと」とよく言われています。

「退職」も人生に関わる大きな判断ですよね。急にそんな判断をさせられたら、せっかく回復しつつある脳も一気にパンクしてしまいます。

ですので、正しく思考することをサポートしてもらうためにも、弁護士に相談することは有効なのです。「どうしても弁護士に相談するのはためらう……」という場合は、主治医の先生はもちろん、通院先にソーシャルワーカー(社会福祉士)や、私のような臨床心理士がいれば相談するだけでも違ってきます。

弁護士や臨床心理士には相談の秘密を守る「守秘義務」がありますから、相談するだけなら職場に伝わることもありません。相談してみて対処するための見通しが持てると気持ちが楽になりますし、「いざというときには、ここにまた相談に来ればいいんだ」と思えるだけでも、心の余裕につながります。

弁護士や臨床心理士は、頭の中でぐるぐるしている悩みや思考を整理する専門家です。1人で抱え込まずに、専門家と一緒に対策を考えてください。

回答3:退職勧奨に強制力はない。辞める意思がないことをハッキリ伝える

突然の退職勧奨で、しかも悪質な対応をされて、気持ちが動転していると思いますが、退職勧奨は、あくまでも雇い主からの「お願い」です。

「○○というわけで辞めてもらえないだろうか」という申し出に対して、労働者が「わかりました」と、合意することを目的にしています。強制力はありませんので、話し合いの場では、自分の意思を伝えることが重要です。

現時点では、第1回目の話し合いが終わった状況ですので、次の話し合いに備えるとよいでしょう。具体的には、スマートフォンなどで「会話を録音する」ことで自衛手段を講じます。あとで「そんなことは言った覚えがない」とシラを切られないためと、「辞める意思がない」としっかり訴えていた証拠を残すためです。

「辞めない」と伝えているにもかかわらず退職勧奨が繰り返されたら、まずは総務部門に相談をします。それでも解決せず、不当解雇されるような事態になったら、慰謝料を含めて、弁護士に相談しましょう。

それにしても、市役所であれば、社会労務士による労務に関する無料相談会を実施しているでしょうし、本来、手本になるべき立場の人たちが、違法まがいをすることに驚きです。いくら圧力がかけられたといっても、患者の診断書を書かない医師はいないでしょうし、いきなり社員(職員)を解雇するようなことはできません。

ということで、退職勧奨に強制力はありません。辞めるつもりがないことをはっきり伝えて、規程で認められている期間内に体調を戻すよう努めてください。

回答4:自分から「退職したい」とは絶対に言ってはいけない

かなりつらい状況ですね。人事の立場から、お答えします。まず、市役所(会社)側は、「財政が苦しいから、すぐに復帰できないなら退職してほしい」という理由で一方的に職員(社員)を解雇することはできません。なので、お仕事を辞める必要は一切ありません。

また、市役所(会社)が嫌がらせや退職強要をして、その証拠がある場合、のちのち市役所(会社)が不利な立場となります。そのため、法的なことを理解している人事ならば、無理に退職を迫るようなことはしません。

ただ、今回は上位の役職の人が揃って退職を迫っているので、法的なことを理解していないと思われます。自分から退職を口にした場合、「自主退職」とみなされてしまうことが多いのですが、それを狙っている可能性が高いです。

そのような上司の場合、きちんと拒んで退職は免れることはできても、そのあとも退職を迫るようなことをされたり、嫌がらせを受けたりする可能性も大いにあります。

ですので、今後に備えて、これからは会話をするときは録音するようにしてください。できれば相手にばれないように、小型の機器や、携帯電話の録音機能を使うと良いでしょう。

もし、退職を免れたあとも、退職を迫られたり、嫌がらせを受けるような状態になった場合は、職場に残るほうがつらいこともあると思います。その際は、自分から「退職したい」とは絶対に言わないで、証拠を使って弁護士に相談するのが良いです。

というわけで、辞めたくないのであれば、まずは絶対に自分から退職を口にしないでください。そして、不当な態度をされ続けるようであれば、弁護士に相談をしてください。

3行まとめ:退職強要に近い退職勧奨をされたときの対処法

  • 自ら「退職したい」と言うと「自己都合退職」になるので、絶対に言わない
  • 「辞める意思がない」ことを訴えて、強要やパワハラと共に証拠を残す
  • 弁護士は守秘義務があるので、安心して早めに相談を

あなたのご意見をお聞かせください。

コメントを書く

この記事へのコメントはありません。