名ばかり管理職で残業代が出なくて給料が下がった。転職したほうがいい?

「管理職に昇格したのに、給料が下がった」「名ばかり管理職が納得できないなら、転職したほうがいい?」と疑問を抱いていませんか?同じように名ばかり管理職に悩んでいる人から、次のような相談をいただきました。

相談
半年前に、社内でも悪名高い役職に昇格しました。一応、所属している営業所の「事務仕事の長」という立場で、所長をフォローする役割になりました。

ですが、今まで担当していた仕事はそのまま任せられています。そこにプラスして管理職としての役割と、所長への対応が加わったので単純な負担増です。

時間も足りなくて残業となりますが、管理職は「管理職手当」という名の固定された金額があるだけで、残業代が一切出なくなりました。

そのせいで、昇進したのにお給料が減るという事態です。「ただの便利屋に成り下がった」としか言いようがない名ばかり管理職です。所長は自分で会議資料一つ作れない人なので、事務作業は全て私に任せてきます。

私一人では終わらないので部下に仕事を振りたいのですが、最近の所長は働き方改革には敏感です。「残業をさせるな」「積極的に有休消化させろ」と言ってくるものですから、部下に仕事を振りにくいです。

部下に残業が発生しようものなら、私が面談に呼ばれて「君は管理ができていない。このままだと役職外すよ」と言われました。

むしろ望むところですが、降格させられても働き続けるのは、私も社内で居心地が悪いというか癪に障るので、転職してしまおうかと考え始めました。

管理職の名にふさわしいお給料をもらうなら、これまで評価された経験を武器に転職したほうがよいでしょうか?それとも、名ばかり管理職でも社内で上位の役職に就けたのなら、今の会社に残ったほうが良いでしょうか?

(33歳♀/不動産業界/事務職/中途入社3年目/年収500万円~600万円未満/既婚(子なし・共働き)

名ばかり管理職0

そこで、このページでは、人事・キャリア相談のプロ5名が、職場での事例や仕事相談の経験を活かして、「名ばかり管理職問題」について、次のような内容で見解を述べていきます。

この回答をすべて読めば、名ばかり管理職はどのタイミングで転職するべきか、今の会社に残ったほうがいいのか、判断できるようになります。

回答1:キャリアに自信があるなら、早めの転職がおすすめ

回答者:澤井(元・人材コーディネーター)
転職回数:4回


勤務時間が長くなったのに、お給料が減ってしまって理不尽に感じているのですね。

もし私でしたら、思い切って転職します。なぜなら、名ばかり管理職で残業代も出ずに給料が下がるくらいなら、少しでも若いうちに待遇の良い会社に転職して、ストレスフリーな環境でのびのびと働きたいからです。

人材コーディネーターとして勤務していたときにも、同じように「今の勤務先に不満があって転職しようか迷っている」という人が来ることがありました。

社会人経験が浅かったり、転職活動の際に強みになるキャリアのない人でしたら、「経験を積むためにも、もう少し今の会社で働いてみてもいいのではないでしょうか」とアドバイスしていました。(派遣会社の立場では、その人の転職活動が終わるまで責任を持てないということもあり・・・)

一方、ある程度キャリアのある人でしたら、「仕事を続けながら転職活動してみてください」とおすすめしていました。働ける期間は無限にあるわけではなくて有限なので、それだったら働きやすい環境で働いたほうがいいと思うからです。

相談内容を拝見する限り、今の会社に残ったところで不満が募るだけだと思いますので、「絶対に今よりも条件のいい会社に転職する!」と目標を掲げて、早めに転職活動を始めることをおすすめします。

回答2:転職の前に、将来もらえる給与額を確認するべき

回答者:すみおか(元人事マネージャー&キャリアコンサルタント)
転職回数:1回


昇進したにも関わらず、管理職業務が増えただけで残業代が一切出ないのは、働いていて苦痛でしかないですね。

「降格して働く選択肢を取るぐらいなら転職をしたほうがいい」と考えているようですが、現職のままで10年・20年働き続けた場合の給与額を考えてみることをおすすめします。

というのも、相談者さまの会社と同じように、残業代がつく平社員から残業代がつかない管理職になると、給与が下がる会社は多くあります。転職をしても管理職にいつかは昇進するので、その時にまた同じ状況になる可能性があります。

なので、目の前の残業代を求めるよりも、10年後、20年後の給与額を考えると、転職するべきか、残留するべきかが見えてきます。

私が前職で勤めていた会社では、管理職に昇進すると残業代が出なくなることから、昇進を拒否し続けた先輩社員がいました。その先輩社員は何度も昇進を断り続けたために、会社は昇進をさせなくなって、50歳を過ぎても平社員でした。

管理職をしている50代の社員と給与を比較すると、残業代を含めても給与額は低い状況となっていました。つまり、管理職になった直後は一時的に給与額は減りますが、10年後、20年後の給与額は、管理職のほうが高くなるのです。

ということで、管理職になったことで給与が減って転職を考えるよりも、将来もらえる給与額を考えて、今の会社で頑張ってみることをおすすめします。

回答3:転職活動を通じて、現職に残るか転職するかの決断をする

回答者:仲森(元人事&キャリア・ディベロップメント・アドバイザー
転職回数:7回


現状の立場と心境を踏まえますと、「転職」ではなくて「転職活動」をしてみることをおすすめします。なぜなら、転職活動をすることで、次の2つの発見ができるからです。

1.自分の実力を客観視できる

自分が魅力的と思える職場ほど、入社難易度が高いものです。一度、転職活動をしてみることで、自分の実力を客観視することができます。

私がキャリアアドバイザー時代、やはり名ばかり管理職に不満を持って、転職活動を始めた人がいました。

この人は、何社かは1次面接まで進めましたが、現職以上の給与が期待できる企業の面接では不採用となって、今よりも給与が下がる企業からしか内定をもらえませんでした。その結果、現職に残る決断をしました。

2.仕事内容が魅力的な企業に出会える

名ばかり管理職は、日本の会社の給与体系としては珍しくありません。転職活動をしても、名ばかり管理職の企業しかみつからない可能性もあります。

ですが、仕事のモチベーションを維持できるものかどうかは、その職場の仕事内容によっても異なります。もし、現職よりも魅力を感じる仕事内容でしたら、給与は上がらなくても転職するという選択肢も出てきます。

ご相談の内容から、これまでの業務で成功体験を積んで、スキルにも自信があるように感じました。ですので、現職に残るか転職するかの判断をするために、まずは転職活動を始めてみることをおすすめします。

回答4:今の会社で頑張ったほうが、将来さらに昇進できるはず

回答者:小池(元・職業訓練校職員)
転職回数:2回


せっかく昇進して管理職になったのに、仕事が増えた上に残業代が出ない名ばかり管理職の実態に納得がいかないようですね。でも、転職を急ぐよりも、今の職場で頑張ってみることをおすすめします。

というのも、私が勤めた会社もそうでしたし、職業訓練校の受講生、知人・友人から聞いた話でも、管理職になると残業代が出なくなる会社はたくさんあります。転職先で昇進したら、また名ばかり管理職になることも十分にあり得るのです。

それに、「昇進した」ということは、「会社から期待されている」ということでもあるので、今の会社で頑張ることで将来さらに昇進するチャンスも掴めます!

以前に「働きすぎる上司を見て自分の将来が心配。今のうちに転職するべき?」でもお伝えしましたが、私は膨大な仕事量の上司から仕事を引き継いだ際に、業務の効率化をしたことがあります。

引き継いだ業務を見直して、プログラミングによって自動化したり、作業そのものをなくしたりして、事務作業の工数削減を図ったのです。不要な作業の中には、上司が属人化(=業務を特定の人が担当して、その人にしかやり方がわからない状態になること)してしまったために、不要と気付いていなかった作業もありました。

部下に急に大きな仕事を振ってしまうと、残業になってしまう可能性があるので、部下の得意なこと、苦手なことをあれこれ考え合わせながら、少しずつ部下の得意な仕事を振ってみてください。

事務作業には、完全分担で結果を出す部分と、部署全体で結果を出す部分があります。部署全体の作業の効率化ができれば、属人化も防げて、ご自分の作業量も自然と減るはずです。

このように、まずは今の仕事を見直して、不要な作業を自動化や削除しつつ、部下に少しずつ仕事を振り分けてみてください。部署全体が効率化されれば、今後の昇給も期待できます。

回答5:管理職としての経験を積んでから転職

回答者:にひら(人事&キャリアコンサルタント)
転職回数:3回


管理職になったのに給与は減ってしまう名ばかり管理職。納得がいかないですよね。名ばかり管理職になってしまった場合、1~2年でいいので今の会社で管理職としての経験を積んでから、管理職に見合う給与をもらえる会社に転職することをおすすめします。

私がキャリアカウンセラーとして相談を受ける際にも、名ばかり管理職が理由の転職相談をされたことが何度かあります。このときに共通していたことが2つあります。それは、

  1. 管理職の経験を1~2年でもしておけば、管理職として転職が決まる可能性が高まる
  2. 今の会社に残り続けた場合、以前より低い給与のままで働くことがほとんど

ということです。

1のケースの人は、1~2年は低い給与のまま耐えることにはなります。ですが、その後に「管理職をやった経験」を活かして、管理職に見合った給与を払ってくれる会社に転職することが多かったです。

一方、ずっと会社に残る選択をした場合は、そのまま「名ばかり管理職」として、低い給与のまま働き続けている人が多かったです。すぐに会社の体制が変わることは少ないからです。

今の低い給与で管理職をするのは、納得できないと思います。ですが、1~2年でも管理職を経験していれば、管理職経験者として転職が有利になる可能性が高いです。そのため、少しの間だけ我慢してから、待遇に見合った会社に転職することをおすすめします。


以上「名ばかり管理職で残業代が出なくて給料が下がった。転職したほうがいい?」の回答でした。
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